歯周病と口臭
口臭にはさまざまな種類があります。そのうち、治療を必要とする病的な口臭のほとんどに歯周病原菌をふくむ口の中の細菌が関与しています。ここでは口臭と歯周病の関係を中心に、口臭の原因や治療を見ていくことにしましょう。
口臭の分類

口臭は4つに分類できます。このうち口臭治療を必要とするのは病的な口臭のみとなります。
生理的口臭
健康な人にでも生じる口臭です。
起床直後、空腹時、緊張時に唾液の分泌が減少し、歯周病原菌などが増殖して悪臭物質が多量に産生されるために起こるものです。
また、加齢および女性の生理にともなう口臭の増加が報告されています。
生理的口臭は治療の必要はありません。歯みがきや食事をするにより唾液量が増加するとこの口臭は急激に弱まります。
外因的口臭
飲食物・嗜好品による口臭 です。 ニンニク、ネギ、酒、タバコなどにおいの強いものを摂取することにより起こります。
外因的口臭は治療の必要はありません。この口臭は一時的なもので、時間の経過とともに無くなります。
心因性口臭

口臭検査では口臭が認められないにもかかわらず、本人は口臭があると思い込んでいる症状です。
自臭症とも言われ、ストレスや精神的に不安定な場合に多く見られます。 心理的な治療が必要な場合があります。
病的口臭

いわゆる口臭治療の対象となる口臭です。
原因によりさらに口腔内由来の口臭と口腔外由来の口臭に分けられます。
口腔内由来の口臭とは、口の中にその原因がある口臭を指します。病的口臭の実に9割以上が口腔内由来の口臭です。
口臭の原因として、歯周病、むし歯、歯垢(しこう)、歯石、舌苔(ぜったい)、唾液の減少、義歯(入れ歯)の清掃不良、口腔粘膜疾患などがあげられます。口臭治療としてはこれらの原因の解消が基本となります。
口腔外由来の口臭とは、耳鼻咽喉系の病気、呼吸器系の病気、消化器系の病気、糖尿病などが原因の口臭です。割合としては病的口臭の1割未満にすぎません。原因となっている病気の治療が必要となります。
余談になりますが「胃が悪い=口臭」と思っている人はずいぶんと多いようです。しかし、食道と胃の境界は食べ物を飲み込んだ時以外は筋肉で閉じていますので、胃の中のにおいが口臭に結びつくことは基本的にはありません。
口臭発生のメカニズム

口臭の元になっている悪臭物質は歯周病原菌などの細菌が産生しています。
一部の歯周病原菌や口の中にいるある種の細菌は、はがれた粘膜上皮、血球成分、死んだ細菌、細菌と戦って死んだ白血球、歯周ポケットからの浸出液、食物残渣などのたんぱく質成分を栄養源として分解し、その結果として悪臭物質を産生します。
| 【悪臭を産生する細菌】 |
悪臭物質としては、酪酸などの揮発性脂肪酸やアンモニアのほかに20種類ほどありますが、このうちの揮発性硫黄化合物(VSC)が主な原因成分と考えられます。VSCの代表的なガスは硫化水素(卵の腐乱臭)、メチルメルカプタン(たまねぎや魚の腐乱臭)、ジメルサルファイド(生ゴミ臭)の3種類です。
口臭はこれらの悪臭物質が混合したもので非常に不快なにおいとなります。
口臭の原因

口腔内由来の口臭の原因を詳しく見てみましょう。いずれの原因においても細菌の増加や細菌の栄養分の増加に結びついています。
口臭の原因1:歯周病
数多くの歯周病原菌のうち、VSCおよびその他の悪臭物質を産生する細菌は相当種に及びます。歯周病が進行する程、歯周病原菌の細菌数も増えていきます。歯周病においては多種多様の細菌がバイオフィルムを形成して増殖していくので、歯周病に直接関係なくとも悪臭物質を産生する細菌も増えていきます。
| 【歯周病原菌】 |
また歯周病の炎症反応に伴い、死んだ歯周細菌や血球成分、歯肉溝浸出液などのタンパク質成分も増えていきます。歯周病にかかっていると、悪臭物質を産生する細菌と産生するための材料が増えるので、口臭はどんどん強くなっていきます。
歯周病の重篤度と口臭のレベルとは相関関係があります。歯周病治療は口臭治療の基本と言われるのはこのためです。消臭剤の使用だけでは問題は解決しません。細菌数を減少させ、炎症を抑制する歯周病治療が必須です。
口臭の原因2:むし歯

小さなむし歯で口臭が強くでることはありませんが、細菌は確実に増え続けます。むし歯が進行して悪臭の産生量が増えてくると次第に口臭が強くなってきます。
むし歯によって歯髄(神経)まで侵されると、壊死した組織を分解して悪臭を産生する細菌がさらに増殖します。タンパク質成分が歯質に比べて豊富なため、悪臭産生が進みひどく臭うようになります。
むし歯治療も細菌数を減少させる有効な方法です。
口臭の原因3:歯垢=プラーク

歯垢は多種多様な細菌のかたまりです。悪臭産生する細菌も数多く含まれています。毎日ていねいにブラッシングして初期の歯垢のうちに除去を続けていれば強い口臭を引き起こすことはありません。
しかし成熟した歯垢はバイオフィルムという形態になっており、歯面に強固に付着しているため、うがいだけでは除去できず物理的に擦り取らねばなりません。成熟した歯垢を放置すると細菌数が増えていくのと同時に、歯周病やむし歯も進行していきますから口臭は加速的に強くなっていきます。
誰にでもみがき残しは必ずあり歯垢は残ります。定期的に歯科医院でプロフェッショナルケアを受けて、歯垢が石灰化して歯石になるのを予防する事が大切です。
口臭の原因4:歯石

歯垢が石灰化してかたく固まったもので、自分では取り除くことができません。プラークコントロールが困難になるため細菌増殖の温床になります。歯石自体が悪臭を放つことはありませんが、歯周病原菌にとって増殖しやすい環境となるので、歯石があれば歯周病になっている可能性が高いのです。
口臭の治療としては歯科医院にて歯科医師または衛生士による除去が必要です。歯周病の治療と共通です。
口臭の原因5:舌苔(ぜったい)

舌の表面につく白~淡黄色の苔のようなものが舌苔です。口臭の大きな原因となり、舌苔のついた舌は口臭の主要な発生部位となります。
舌苔は死んだ細胞や新陳代謝ではがれた粘膜上皮細胞、血球成分、食物残査などからできています。これらのタンパク質成分が歯周病原菌やVSCを産生する細菌によって分解されます。
舌苔は舌についた歯垢ともいえるものなので、口臭治療としては除去が必要です。歯科医院で除去をしたのち、清掃方法のアドバイスを受けてからセルフケアをします。舌苔はうがいだけでは取り除くことはできません。専用の舌ブラシかやわらかい歯ブラシ、またはガーゼなどを使用します。清掃後のデンタルリンスの使用も効果があります。
口臭の原因6:唾液の減少
唾液には洗浄作用、抗菌作用、粘膜保護作用などがあります。唾液の分泌が少なくなるとこれらの作用が弱まり、細菌の増殖を助長することになります。さらに乾燥することにより、VSCやアンモニアなど揮発性物質がガス化しやすくなって口臭が強くなります。
薬の副作用で唾液の分泌が抑制されることもあります。歯磨きや食事、会話などによって唾液の分泌は促進されますが、病的な唾液の減少は治療が必要です。ドライマウス、口腔乾燥症についてはさらに他の病気と関連していることがあります。
口臭の原因7:義歯の清掃不良

義歯(入れ歯)のプラスチック部分はにおいを吸着します。一度吸着したにおいは取れません。 必要に応じて再作製します。
口臭の原因8:口腔粘膜疾患

口腔粘膜は、舌、歯肉、頬、口唇、口蓋などを覆っている軟組織です。この粘膜に発生する病気を総称 して口腔粘膜疾患とよんでいます。水疱、びらん、潰瘍を形成するものがあります。口腔癌(口の中のガン=舌癌、口腔底癌など)も含まれます。
口腔粘膜疾患により清掃性が低下して細菌の増殖を助長し、口臭が発生することがあります。悪性腫瘍の初期症状や難治性疾患の可能性も あるので、口腔内に変化を見つけたら早目に歯科医師に相談することをおすすめします。
口臭治療

口腔内由来の病的口臭治療はその元となる悪臭物質を産生する細菌数を減少させることに尽きると行っても過言ではありません。プロフェッショナルケア とホームケア(セルフケア)の双方が必要です。特に歯周病治療は細菌が繁殖増殖しにくい口腔環境を作るうえで非常に重要です。また、ホームケアは継続されないと成果は上がりませんし、再発の可能性が高くなります。
セルフケアとしては、口の中を清潔にすること、プラークコントロールをすること、鏡で異常がないかチェックすること、十分な睡眠とバランスの良い食生活で規則正しい生活を送ること、楽しくリラックスした状態でストレスを過度にためないことなどです。

プラークコントロールには歯ブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシ、舌ブラシ、洗口剤(デンタルリンス)などを使います。義歯(入れ歯)の清掃も含めて毎食後に行うのが基本です。殺菌作用のある洗口剤(パーフェクトペリオウォーターなど)の使用は効果が期待できます。
プロフェッショナルケアでは、口臭の原因となっている口腔内の問題点を確実に解決していきます。その結果、悪臭物質を産生する細菌が減少し、口臭が改善していきます。悪臭物質を産生する細菌には多数の歯周病原菌が含まれていることを考えると、歯周病治療は口臭治療の基本となります。
殺菌除菌がシステムに組み込まれているパーフェクトペリオ療法は、効率的で効果的な口臭治療の方法と考えられます。有力な選択肢のひとつということができるでしょう。
| 【殺菌治療前】 | 【殺菌治療後】 |
さらに口臭治療が終了したあとも定期的に歯科健診と歯科医師、歯科衛生士によるPMTC(専門的歯面清掃)を受けること、自分の口の状況にあった適切な清掃法の指導を受けること、
新たに付着した歯垢・歯石を除去すること、歯周病やむし歯を早期発見、早期治療することなどが必要です。
恥ずかしがらずに早めに歯科医師に相談することが問題解決の近道です。



