かぶせる治療とブリッジ
クラウン(かぶせる治療)とブリッジ(つなげる治療)

ここでは、クラウンとブリッジというものについて説明していきます。皆さんにはちょっと耳慣れなくて、想像するのが難しい言葉ではないかと思います。でも歯の治療方法としては、決して特殊ではなく、むしろ一般的、日常的で普通に行われている治療方法なのです。
あなたご自身の口の中に、1本の歯を丸ごと全部銀歯にして治した歯はありませんか?少し年配の方でしたら、歯を抜いたあとを残った歯をつなげて治した場所ありませんか?1本のものがクラウン、つなげたものがブリッジです。 ご自身にはなくてもご家族を含めれば、クラウンの実物を見ることはそれほど難しくはないでしょう。それほどたくさん行われている治療なのです。
クラウンとブリッジは基本的な治療でもあるので、応用したり、利用したりした治療方法はさらにとてもたくさんあります。ですから、今回はクラウンとブリッジの基本中の基本を細かい部分まで説明していくことにします。この治療の流れの中で、我々歯科医師がどんなことをやっているのか、きっと理解していただけるでしょう。

歯科の世界では今現在も新しい材料がどんどん開発され、治療方法もさらなる改良が積み重ねられていきます。しかし、基本の事を知った上でなら、その応用の話は理解しやすいでしょう。クラウンとブリッジの治療が近い将来、急になくなってしまうとは考えにくい事です。先進的な治療も素晴らしいですが、その基礎ともいうべきクラウンとブリッジでの治療のことを理解しておくことは決して無駄にならないはずです。

クラウンとブリッジの基本
まずは大雑把なイメージを掴んでおきましょう。クラウンとブリッジはそれぞれ英語のCrownとBridgeです。Crownは冠(かんむり)、Bridgeは橋(はし)という意味です。クラウンは王様がかぶる王冠のイメージです。上からスポッとかぶっています。あれです。歯の治療の場合もスポッとかぶせる治療です。ブリッジは失ってしまった歯をおぎなう治療方法です。抜いた両隣の歯を橋の支えとして、歯がつながった形の橋をかける治療です。最も単純なのは、両端がクラウンになっ
ていて1本歯を抜いたところが橋の本体になっているものです。

いかがですか?クラウンとブリッジ、何となくイメージが掴めたでしょうか?掴めたらさらに詳しい解説をしていきましょう。それぞれどんな場合に作成するのか?そしてその作成の手順と作成に使用する材料について解説していきます。
クラウンの詳細

まずはクラウンからです。先ほどもいいましたが、グルッと削ってすっぽり全体を被せる治療です。
虫歯や事故で歯に穴があいた場合や、欠けてしまった場合に作ります。失った部分が大きければクラウンで治し、小さければ金属やプラスティックを埋め込んで治すことが多いです。クラウンで治すか、埋め込んで治すかの境界は、埋めるだけでは強度が保てないと判断される場合や、歯が割れてしまう危険性が高いと判断される場合の基準に準じます。
もう一つクラウンで治す場合があります。歯の色や形を修正したい場合です。歯というものは神経を抜く治療を施すと、少しずつ変色していきます。また生まれつき歯の色を本人が気に入らなかったり、薬剤などの影響で歯の色が暗くなってしまったりもします。このような歯の色を修正する治療のひとつとして、歯の色そっくりな白い材質のクラウンで治すことがあります。
歯の形の修正は、ねじれていたり、歯の背丈が高すぎたり低すぎたりしている歯に対して行います。すっぽりと被せるときに、もともとの歯の形ではなく、より理想に近い形のクラウンで治します。
逆にクラウンの治療をしたくてもできない場合がいくつかあります。当然と言えば当然ですが、歯を根ごと抜いてしまったらクラウンの治療はできません。少なくとも根が残っていなければなりません。その根もぐらぐらだったり、割れていたりすると、例外を除いてクラウンにできません。また、クラウンの治療は治療しようとする歯をだいぶ削る必要があるので、できるだけ歯を削りたくない人や歯を削ることに同意できない人にはできません。

元の歯と同じ大きさでちょうどぴったりのクラウンを作るためには、リンゴの皮を剥くようにグルッと一層、クラウンの材質の厚み分だけ削らなければなりません。これはどんなクラウンを作るときでも一緒です。グルッと一層削ることがクラウンの治療には必要です。正確にいうと、グルッと一層削った形に整えることが必要です。どういう意味かというと、削るのとは逆に盛り足さなければならない場合もあるということです。大きな虫歯で歯が欠けてしまっている時などがこれにあたります。
歯肉ぎりぎりまでクラウンで被せますから、削って形を整えるのは歯肉の少し下まで行います。ですから歯肉が腫れていたりちょうどその場所に歯石がついていたりすると、仕上がりのいいクラウンができません。ここでいう仕上がりがいいクラウンとは、安定した状態の歯肉のラインの少し下に沿って装着されるクラウンです。腫れが引けば歯肉のラインが変わります。それを正確に予測するのは不可能なので、通常はクラウンの治療をする前にあらかじめ歯肉の状態を整える治療をしておきます。
クラウンの治療手順

今度はクラウンでの治療の具体的な手順を見ていきましょう。大きな虫歯があるけど神経は生きている歯と神経を抜いて根の治療が済んだ歯でそれぞれ見ていきます。
神経が生きている歯の場合はそのままグルッと削ると痛いですから、その前に麻酔の注射をします。神経を抜いて治療をした歯は、痛くないですから麻酔の必要はありません。麻酔の方法などはここでは解説しませんが、麻酔のきき方は麻酔の場所によっても違いますし、個人差もありますので、全くの無痛状態まで麻酔がかからない場合があります。麻酔が十分に効いたら、まず虫歯になってしまった部分をしっかりとります。とり終わったら、

グルッと削った形に整えていきます。必要なら虫歯で大きく削った場所をプラスティックやセメントなどで埋めて、さらに形を整えます。
神経を抜いて根の治療が済んだ歯の場合は、虫歯の部分は既に取りきってあるはずです。ただし神経を抜くほどの虫歯だったので、大きく削ってあることがほとんどです。グルッと削った形に整えていくときには、足りない部分を補わなければなりません。さらに、神経を抜いた歯は年数が経つと徐々に柔軟性がなくなって脆くなっていきます。つまり欠けたり割れたりしやすくなっていきます。ですから、足りない部分を補うと同時に補強するように歯を埋めていきます。これをコアといいます。英語のCore、芯とか核という意味です。

コアに使う材料は金属やプラスティック、あるいはその両方です。型を取ってそれをもとにコアを作る方法と口の中で直接コアを作る方法があります。いずれにしても、神経を抜いた歯の場合はまずコアを装着し、その後グルッと削った形に整えていきます。
歯肉のラインに沿って綺麗に形が整ったら、次に型を取ります。型は噛み合わせをきちんと作るために、上下組みで取ります。さらに、噛み合わせの記録や顎の動きの記録、顎の関節の状態の記録などを必要に応じて取っていきます。型や記録は最新のものを使った方がより精密なクラウンが作成できます。作成するクラウンは全てオーダーメイドです。型を取った人の、なおかつその歯専用です。使い廻しはできません。作成が難しいクラウンや、特殊な条件がある場合には同じような型や記録を何度も取ることがあります。後日、あらためて同じ型を取ることもあります。型や記録が正確にとれたら、仮歯をつけます。つけないままの場合もあります。麻酔をかけてから削った神経が生きている歯や前歯を治療した時は仮歯をつける場合が多いでしょう。作った仮歯は仮付け用の接着剤でつけます。仮歯はとれたり壊れたりしやすいので注意が必要です。
ここまでが診療室の中での治療です。このあとは歯科医師と技工士が相談をして、型や記録をもとに主として技工士がクラウンを作成していきます。
クラウンの材質

クラウンはいろいろ材質で作る事が可能です。金、白金、銀、チタン、コバルトクロム、プラスティック、セラミックなどです。これらを組み合わせて作る事もできます。金属は純金とか純銀では作りません。金なら金を多く含んだ歯科用の合金で作ります。金でいうと20〜22金というところでしょうか。他の金属も同様です。

金や白金は錆や腐食に強いのが特徴です。特に金は口の中でも安定度抜群で、適度に軟らかく歯科の材料として昔から使われています。銀は長年使用すると黒く変色する事があります。チタンは軽量なこと、コバルトクロムは硬さに優れています。
現在、健康保険の適応とされているクラウンの合金は、金、銀、パラジウムを主としたものです。安定性や経済性、加工のしやすさなど一定の用件を満たしたもので、幅広く使われています。

プラスティックは見た目のきれいさはあるのですが、口の中で使う材料としては軟らかいのが難点です。これも長年使うと変色や着色することがあります。
セラミックは七宝焼のようなものです。セトモノです。金属色でない白いクラウンの主流の材料です。変色などはしませんが、天然自然の歯よりも堅いので噛み合わせの相手の歯をすり減らしてしまう事があります。また、衝撃的な力に弱いため、急に欠けたりする事があります。
プラスティックやセラミックを金属と組み合わせてクラウンを作る方法もあります。内側に金属、外側の特に見える部分にプラスティックやセラミックを使って作ります。いずれにしても噛み合わせの関係や歯の状態によって、どれが可能か、適切かは千差万別です。また、経済的な事もあります。その時々で健康保険の制度は変化していきますから、十分に担当の歯科医師と相談して決めるとよいでしょう。
色や形の再現が難しい場合や、要求が厳しい場合には仕上げる前にもう一度来院していただき色合わせをすることもあります。しかし大抵の場合、型などを取った次の来院の時に仕上がったクラウンを装着します。完全に接着する前に噛み合わせなどのチェックを行い、微調整と最後に磨きをかけて接着用のセメントなどで着けていきます。
以上がクラウンの基本です。全体をグルッと削ってすっぽり被せるシンプルですが奥の深い治療です。特殊な例として、歯の裏側だけを被せるものや中のクラウンと外のクラウンで二重に被せるものなどたくさんあります。特殊なものは基本のものよりも条件や要件が厳しい場合が多く、解説は専門的になりすぎるので、関心のある方はかかりつけか担当の歯科医師に尋ねてみるとよいでしょう。
ブリッジの詳細

さて次はブリッジについてです。ブリッジは一言でいうと歯の無い場所を橋渡しする治療です。ここまで読まれた皆さんはクラウンの事を十分理解していると思いますので、ブリッジの理解はさほど難しくないはずです。
最も単純なのは、クラウン二つとその間のダミーと呼ばれる部分を一つにつなげて作るブリッジです。ダミーはDummyと書き代役、替りの品という意味です。歯の無いところに橋渡しで代替えの歯を補います。ダミーは歯肉に接するようにして、見た目を良く仕上げると掃除がしにくくなります。逆に歯肉から離すと掃除はしやすいですが見た目はよくないです。前歯寄りのダミーほど見た目重視で作成する事が一般的です。

ブリッジはどちらかというと失った歯の本数が少ない場合に採用します。飛び石のように歯が残っていれば、ある程度の失った本数までは対応できます。ブリッジはダミーの部分にかかる噛む力をクラウンで被せた歯で負担します。ですから、あまり多くの歯が無い場合や、残っている歯に無理がかかる場合にはできません。成人でしたら上下とも親知らずをのぞいて14本ずつ歯がありますが、抜いた歯と残った歯の配置のバランスによっては14本全部をブリッジとして連結して治療する事まで可能です。残っている歯の状況によってブリッジでの治療可能かどうかが随分と変化します。
ブリッジの治療ができないのは、残っている歯が支える歯としての条件を満たさない時です。根が短すぎる、傾きが大きすぎる、ぐらぐらしている、割れているなどの場合にはブリッジを支える歯としては不適格です。ブリッジを支える歯としてクラウンを被せる歯には、クラウンの諸要件も必要になります。やはりグルッと一層削った形に整えなければなりません。
ブリッジを作成する具体的な手順はクラウンとほぼ同じです。複数の歯を削って準備をします。ダミーとクラウンの合計が多い場合や噛み合わせが難しい場合には、最終の型を取る前に仮歯を作って試しに使ってみる事もあります。また、多数の歯のブリッジほど型や記録を取ってからあとの作成中に歪みが出やすいので、仕上げる前に患者さんの口の中でチェックする事があります。
使用する材料もクラウンと同じです。ただし、プラスティックのみやセラミックのみのブリッジは例外的にあるだけで、ほとんどが金属単体もしくは金属とプラスティック、セラミックの組み合わせで作成します。これは橋渡しをする構造なので、材料に強度が必要なためです。
他の治療法との比較

ブリッジは歯の無くなったところを回復する治療の一つです。他の治療方法としては入れ歯やインプラントなどがあります。長所短所を比較してみましょう。
入れ歯はフックやバネがかかる歯をほんの少々形を整えるだけで作る事ができますが、舌触りが良くなく、異物感があります。自分で取り外して清掃しなければなりません。一本だけの入れ歯から総入れ歯まで、どんな歯の残り方にも対応できます。

インプラントは手術が必要です。
インプラントをしようとする場所の骨の状況や全身の状態によって手術ができない場合があります。一本のインプラントで一本の歯を補う事ができるので、残っている歯を削る必要がありません。手術が可能ならばたくさんの歯をインプラントで治療可能です。手術から最終の歯が装着されるまで多少の期間が必要です。舌触りもよく異物感も少ないです。

ブリッジは残っている歯の状況で可能かどうか決まります。あまりたくさんの歯を補うことはできません。支えに使う残った歯を削る必要があります。舌触りも良く異物感も少ないです。
比べてみると、ブリッジは手術の必要なインプラント程ではありませんが治療するには条件があります。条件を満たしていれば異物感の無いものが、ある程度短期間で装着できます。見た目にきれいな白い材質も選ぶ事ができます。ただし、支えになる歯を削らなければなりません。

ブリッジにはブリッジの良さも限界もあるので、相談し、十分に説明を受け、納得して治療を受けるようにしましょう。
一般の治療科目
- むし歯治療
- 歯内治療(根の治療)
- かぶせる治療とブリッジ
- 審美歯科
- 義歯(入れ歯)治療
- むし歯予防



